「格安で英語留学ができる!」というイメージが強く若者を中心に人気の高いフィリピン留学。でも、そんな単純に”良いところばかり”ではありません。
フィリピン留学を経験した人のなかには、「こんな環境だったならフィリピンに行かなければ良かった……」と後悔している人も少なくないと聞きます。
では、どのような視点からフィリピン留学はおすすめできないのでしょうか? フィリピン留学をおすすめしない理由をまとめてご紹介します。
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このページの目次
フィリピン留学をおすすめしない理由一覧
フィリピン留学をおすすめしない理由は、大きく5つの要因に分けられます。それが以下の5つです。
- 留学生はアジア圏の学生に集中している
- ネイティブの講師の授業ではない
- インフラや衛生面がまだ整っていない
- 治安やセキュリティ面に不安要素がある
- マンツーマン授業ゆえの弊害がある
ここからは上記5つの要因をさらに深掘りしていきながら、フィリピン留学がおすすめできない理由を解説していきたいと思います。
留学生はアジア圏の学生に集中している
海外留学のひとつの醍醐味が、多国籍な学生に囲まれ、ともに授業を受ける学生生活かと思います。
しかし、フィリピン留学の学生構成の現実は、その多くが韓国・台湾そして日本の留学生です。つまり、「ほぼアジア人のみ」が集まって勉強しているのがフィリピン留学の実態なのです。
以下はフィリピン・セブにある「SMEAG GLOBAL EDUCATION(通称、SMEAG校)」が公開している学生の国籍比率のデータです。
スパルタコース | 韓国人:37% 日本人:36% 中国人:3% そのほか:24% |
クラシックコース | 韓国人:37% 日本人:28% 中国人:12% そのほか:23% |
キャピタルコース | 韓国人:38% 日本人:42% 中国人:2% そのほか:18% |
データは少し古く2016年のものですが、現在もさほどその構成比率は変わらないと考えると、いかに韓国人・日本人比率が高いかが見て取れます。
ではなぜ、アジア人比率がここまで高いのでしょうか。
アジア人以外にとってフィリピン留学は知名度が低いから
一番の理由は、フィリピン留学がアジア人以外から知名度を得ていないためです。
日本では2010年ごろを契機にフィリピン留学の知名度が高まっていきました。そのおかげで、現在では若者の英語留学先の一つの選択肢として名前があがるまでになりました(特に「格安の英語留学先」という認知で)。
ただし、世界的には英語留学というと、アメリカ・カナダ・イギリス・オーストラリア・ニュージーランド・アイルランドのほうが知名度のある選択肢。特にアメリカ・イギリスは英語の本場として、英語学習者の留学先に不動の人気を得ています。
また、英語を学ぶ南米(ブラジル人やアルゼンチン人など)や欧州(スイス人・フランス人・スペイン人など)の人々からすると、わざわざ東南アジアのフィリピンまで留学する動機がないという点も留学生が少ない大きな理由です。
地理的にイギリスやアメリカに留学したほうがラクなので、わざわざフィリピンまで留学に訪れないのです。
フィリピン留学は韓国人が仕掛けて広まった
ではなぜ、韓国人の留学生がフィリピン留学では多いのでしょうか。その秘密は、1997年の「アジア通貨危機」にあります。
アジア通貨危機とは、1997年にタイを中心に連鎖的に発生したアジア各国の通貨の急激な下落現象のことです。この連鎖的な通貨の下落現象によって、特に韓国経済は大きく冷え込み、もともと国内の市場規模の小さかった韓国は国をあげて韓国企業の海外展開を進めていったのです。
海外展開の動きにより、韓国企業への就職には大手企業ならTOEIC700点以上、超人気企業ならTOEIC900点以上でなければ採用されないかたちとなりました。
こうして若者の英語学習の需要が急激に増しましたが、一方で誰もがアメリカやイギリスといった国に留学できるほど費用(お金)に余裕があるわけではありません。
そこで、韓国市場が目をつけたのが、英語が公用語であり、かつ物価の安いフィリピンだったのです。
フィリピンだと欧米の語学学校と比べ、人件費も安く済むため、マンツーマンの授業を多く提供することが可能。韓国からも同じアジアで距離が近いため、一気に広まっていったのです。
そして少し間を置いて2010年ごろには、日本でも「格安英語留学ならフィリピン」というイメージとともに留学生が急増。その結果、韓国人と日本人がフィリピン留学には多くなりました。
なお余談ですが、フィリピン留学でよく見られる「スパルタコース」の「スパルタ」というネーミングは、韓国資本の語学学校が使いだしたことがきっかけと言われています。受験競争・就活競争が激しい韓国のカルチャーが垣間見えますね。
ネイティブの講師の授業ではない
フィリピンでは、タガログ語と併用して英語が公用語になっていますが、アメリカやイギリスといったネイティブの国と比べると”独自の訛り(なまり)”が存在します。
そして、フィリピン留学の講師はそのほとんどがフィリピン人となりますので、真にネイティブの英語には触れづらいという側面があります。
選択するコースが異なると純粋に比較はできませんが、ネイティブ講師だからこその言い回しや話し言葉のスラングは、ネイティブの語学学校と比べると触れる機会は少ないでしょう。
よって、フィリピン留学中は自覚していなくても、いざネイティブとコミュニケーションすると英語の違いに強いギャップを感じるかもしれません。
あくまで基礎的な英語学習に取り組みたい方や英語の初学者には適しているかもしれませんが、中級以上の英語レベルの方にはフィリピン留学は適していないといえます。
フィリピン留学の学習は基本、教科書ベース
フィリピン留学の授業は、基本的に教科書をベースに進められます。教科書をベースに進めるため、英語初心者の方にとっては、学習の進捗を理解しやすく満足度を得られやすいかもしれません。
しかし、英語力が中級以上の方にとっては、教科書から逸脱することが少ないので授業のレベルがミスマッチだとモヤモヤとフラストレーションが溜まる可能性があります。
基礎的な英語力をすでに獲得している方であれば、フィリピン以外の留学先を検討するか、語学学校やコースが自身のレベルに見合っているかを慎重に検討する必要があるでしょう。
講師の質にムラがある可能性
留学生の多い春休みや夏休みの時期には、正規雇用の講師では対応できないので「臨時講師」をスポットで雇うケースがあります。
この臨時講師は、いわば短期間のアルバイトのようなものですので、授業の質にムラが発生し、結果として未熟な講師の授業を受けざるを得ない可能性があります。
特に採用力に課題が生じやすい中~小規模の学校や設立間もない学校で起きやすいといわれています。
講師も人間なので、完全に同じクオリティの授業を求めるのは確かに無理があります。また、生徒(あなた)との相性の問題もあるはずです。
とはいえ、明らかな授業の質の低下を防ぎたいのであれば、ベテラン講師の多い学校や大手の語学学校を選択されることを推奨します。
インフラや衛生面がまだ整っていない
フィリピンは他の英語留学国であるアメリカやイギリス・オーストラリアなどと比べると、インフラや衛生面に不安のある国です。
国としては年間のGDP成長率が6%を上回っており、東南アジアのなかでも随一の成長度を誇るフィリピン。しかし、その経済成長に街のインフラや衛生面の整備が追いついていないのがリアルな実状です。
道路が未整備で陥没していたり、夜中の停電や大雨が降った日の洪水などはフィリピンに留学を決意したならば事前に想定しておくべき。
また、語学学校の寮の食事やシャワーなどの水回りもなるべく期待値は下げておいたほうが良いでしょう。
学校や寮のフリーWi-Fiも多くの施設では普及していますが、繋がりが悪かったり、回線速度がさほど早くなかったとしてもそれは受け入れるしかありません。
韓国資本と日本資本の学校で異なる食事
韓国人留学生が多いフィリピンの語学学校は、韓国人の好みにあわせて唐辛子やニンニクを用いた料理が多いそうです。その点から考えると、韓国資本の語学学校はその傾向が強いと推測されます。
フィリピン留学の学校(寮)の食事は、最近では日本人の基準でも十分満足できる学校も増えてきているそうですが、全体的にはあまり期待はしないほうがよいでしょう。
例えば、「メニューが単調で毎日食べていると飽きる」「お肉がカタく、野菜がフレッシュではない」「お米がとてもパサパサしている」などの感想も多いです。
このような学校を避けるには、事前にネットの口コミなどに目を通しておきましょう。また、「フィリピン国内でも学費が極端に安い」「若者(大学生)がメインターゲット」の学校は、食事の質が低い傾向が強いそうなので意識して判別してみてください。
ネット回線が心配な人はポケットWi-Fiがおすすめ
フィリピンの街なかには多くのフリーWi-Fiが普及していますが、回線速度や繋がりやすさは場所によってマチマチです。
今の時代、インターネットは生活に欠かせませんから、留学生にはスマホのSIMカード、PCも利用される方はポケットWi-Fiの契約を推奨します。
SIMカードはフィリピンのスーパーや携帯ショップ・雑貨屋などあらゆる場所で購入可能。フィリピンで有名な携帯会社「グローブ(GLOBE)」のSIMカードを購入するのが一般的です。
SIMカードは現在1枚100円ほど。スマホに挿入したSIMカードにプリペイド(チャージ)することで使用できます。参考価格として一例を紹介すると、1カ月ネット使い放題で99ペソ(約2,400円)ほどとなります。
治安やセキュリティ面に不安要素がある
言うまでもなく日本は世界有数の治安の良い国です。その日本と比べると、フィリピンの治安は悪いと言わざるを得ないでしょう。
実際に国際的シンクタンク『経済平和研究所(IEP)』が公表している世界の平和度を示す番付によると、日本は163か国中9位であるのに対し、フィリピンは129位です。
この順位は英語留学先として同じく人気の高いアメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアより下位となります。
フィリピンで留学生が巻き込まれやすい犯罪は、スリや置引き・ひったくりなどの軽犯罪。フィリピンに限らず海外ではよくある軽犯罪ですが、日本人は油断しやすいのでよく狙われるのです。
イスラム過激派の脅威も存在する
マニラ市内やセブ島・アンヘレス地区では、先ほどお伝えしたスリやひったくり・置引きなどの軽犯罪に注意しなければなりません。
一方、ミンダナオ島の一部地域やスル諸島は、イスラム過激派組織『アブサヤフ』の活動が活発なエリアと報告されており、テロや誘拐に巻き込まれるリスクもあります。
フィリピンへの留学生は、基本的にあまり用のない地域かとは思いますが、原則としてこれらのエリアには近づかないようにしてください。
フィリピン留学中は常に警戒を怠らないこと
日本より治安の悪いフィリピンで、特に軽犯罪に巻き込まれないためには、基本として常に警戒を怠らない姿勢が大切です。
代表的な軽犯罪であるスリや置引きは、常に手荷物や財布を肌身離さず、ちょっとした離席やお手洗いに行くときにも持ち歩くことが重要。滞在期間が長くなっても、外出するときには油断をしないようにしてください。
ひったくりへの対策は、「車道側にバッグを出さない」「バッグは前に持つ」ことがポイント。そして、もしひったくりにあったときは意地になって手荷物を掴み続けていると車やバイクに引きずられ、大ケガに繋がるリスクもあります。
ひったくりには、そもそも狙われないように日頃から行動を意識するようにしましょう。
このようなフィリピンの治安情報やトラブルに巻き込まれた際の対処法について、以下ページで詳しく解説しています。こちらもあわせてご覧ください!
マンツーマン授業ゆえの弊害がある
フィリピン留学では、欧米に比べて人件費が安いという特性からマンツーマン授業が一般的です。もちろん、グループレッスンも用意されていますが、マンツーマン授業を推奨されるケースが多いのです。
マンツーマン授業は、講師と1対1で授業を受けられるので、アウトプット(主に英会話)の量を担保できるメリットがあります。
一方で、欧米の語学学校のような1クラス10~15名ほどで構成されているグループレッスンには、英語圏と同じグローバルな雰囲気が存在します。
複数名で同時に授業を受けるため、海外の学生の前で発表をしたり、ディスカッションをする際には「積極的な発言力や周りを気にしない力」が問われます。
このまだ拙い英語力で積極的に発言し表現する経験は、英語圏で将来生活や仕事をするうえで欠かせないスキルであり、フィリピンのマンツーマン授業では得られにくいのです。
レッスンスタイルを上手に組み合わせること
このようにマンツーマン授業とグループレッスンには、それぞれのメリットがあります。
ベーシックな英語力を短い期間で集中して身に付けるにはマンツーマン授業が有効。しかし、複数人のなかで積極的に英語で発言したり、意見を表現するスキルを身に付けるにはグループレッスンも受けておくべきでしょう。
その点ではフィリピン留学は、韓国人や日本人・中国人など同じアジア人が多い傾向にあるため、英語圏のようなグローバルな雰囲気はたとえグループレッスンであっても感じづらいかもしれません。
つまり、英語の初学者を除く中級者~上級者の方には、フィリピン留学は適さないと言えるのです。
フィリピン留学のおすすめポイント
ここまで、フィリピン留学をおすすめしない理由をお伝えしてきました。
しかし、もちろんフィリピン留学にも魅力的なポイント・メリットは存在します。ザっと箇条書きでフィリピン留学のおすすめポイント・メリットをまとめてみました。
- 英語留学がお手頃価格でリーズナブルにできる
- 日本から渡航しやすい
- マンツーマン授業が多く、短期間で基礎英語を詰め込める
- お試しとして短期留学も可能である
- 休暇やレジャーのついでに留学できる
このようにフィリピン留学には良いところもあるのです。
以下ページでは、フィリピン留学のメリットやおすすめポイントをまとめていますので、こちらもあわせてご覧ください!
フィリピン留学が向いている人・向かない人
記事では、「フィリピン留学はおすすめしない」という切り口で話を進めさせていただきましたが、もちろんフィリピン留学は向いている人とそうでない人に分かれます。
あくまで『留学羅針盤』の考える意見ではありますが、フィリピン留学が向いていないと思える人は以下のような人です。
- 英語力が中級以上(TOEIC700点以上)の方でより実践的な英語を学びたい方
- 留学予算に余裕のある方
- ネイティブの環境で英語を学びたい方
- インフラが先進国基準に整っている環境で留学したい方
逆にフィリピン留学が向いていると思う人は以下のような人です。
- 英語初心者の方全般
- 英語初心者の方で短期間で日常会話力を高めたい方
- 英語初心者の方で留学費をなるべく抑えたい方
- 英語初心者の方でグループレッスンが苦手な方
- 途上国での生活にも抵抗がない方
こうして見てみると、ざっくり分けるならば「英語初心者はフィリピン留学がおすすめ」「英語中級者以上は欧米への留学がおすすめ」と分けることができるかと思います。
皆さんもぜひ参考にしてみてくださいね!
英語初心者ならフィリピン留学はおすすめ!
改めて結論を整理すると、「フィリピン留学は英語初心者にはおすすめ!」ということになります。つまり、英語中級者以上でより実践的な英語力を身に付けたいと考えている人には、正直おすすめできません。
確かに、欧米と比べて格安で留学できるフィリピンですが、外資系企業や英語圏の企業で将来働くことを見据えている英語中級者以上の方であれば、予算はかかりますが英語圏へ留学するべきでしょう。
フィリピン留学の安易な情報に踊らされることなく、しっかりと自分で責任をもって情報をリサーチし、後悔のない海外留学生活を送られてくださいね!